~ フードビジネスの壁 ~
私が県政を目指した昭和50年代に本県に企業進出していただいた企業が規模縮小したり、閉鎖されたりする報道に接するたび、淋しさや将来への不安を覚える今日この頃です。
知事もようやく全国トップクラスの農畜産物に価値を付加するフード ビジネスに取り組み、食品関連産業の活性化を図るとの意気込みを述べておられますが、今、原材料の供給元となる本県の農業が危機に直面しております。
和牛全国一2連覇の輝かしい表舞台とは裏腹に、農業の現場ではデフレ経済による生産原価割れ、追い打ちをかけるようにTPP交渉参加の動き、正に本県がフードビジネスに活路を見出そうとする矢先の壁になるが故、誠に許し難い思いで一杯であります。
私ども県議会自民党の農業食料問題調査会は昨年、その実態調査を世界最大の農業国であるアメリカで在米日本大使館、JA全中ワシントン事務所、農林中金ニューヨーク支店、アメリカ全農貿易の協力をいただいて実施しました。
主要穀物世界生産量の4割を占めるアメリカの農業を抜きに日本の農政は考えられません。
今回TPP問題もあり、現地の最前線で調査活動をされている在米大使館の農水省職員の方や、JA全中の駐在員に生の情報をお聞きしようとワシントンの日本大使館を訪ねました。
大使館が用意した「米国の農業概況と日米間の農業課題」というレジメに添って説明を受けました。項目は多岐に亘っていましたが世界の穀物取引の指標となるシカゴ商品取引所、あるいは米国農務省のデータを駆使し、アメリカ農業の説明をいただきました。
最近の世界の食料需給の動向に始まり、国際価格、穀物市場を取り巻く各種経済動向、主要国の作柄概況、中国の旺盛な穀物等の輸入需要、バイオ燃料生産の拡大とその政策、遺伝子組み換え作物の世界的な広がり等、広範囲にわたるレクチャーは世界政治の中心地ワシントンでしか聞くことのできない内容でした。さらに、農林中金・全農貿易のニューヨーク支店では世界金融の動向、農畜産物貿易の現況等の説明を受け質疑を行いました。
今回、訪問した野菜農家、穀物農家への聞き取りでは生産者レベルはTPP問題に全く関心も無く、情報も持っていませんでした。
サリナスの野菜、イチゴ、イリノイ州の小麦、大豆、とうもろこしにしても既に世界中へ販売ルートを開拓しており、なかでも日本では大きなマーケットシェアを占め、農産物の自由化はアメリカ農業からすればとっくの昔に完了しているのでしょう。
ワシントン大使館の農水省関係者、JA全中の駐在員の話からすると、総じてアメリカではTPP問題は政府の農務省や食料、農業関連団体の一部の関係者のみで論議されているのかと推察しました。
結論としてアメリカの多数の団体、企業は日本のTPP交渉参加を支持するとのパブリック・コメントが寄せられていることを聞き、改めてTPPはアメリカ主導の完全自由化に向けての貿易交渉であることを強く感じさせられました。
アメリカ社会は深刻な失業問題や一部大企業への富の集中など、アメリカ経済自体が閉塞感を強めている状況下でも、農業については順調な穀物輸出、相場の上昇を背景とした数少ない成長産業であり、安定した収入が見込める職業になっているとの説明を受け、日米の農業事情の違いと格差に空しささえ覚えました。
昨年末に希望の持てる新しい政権が誕生し、久し振りに国政への期待感が高まっております。私ども県政の一翼を担う者としてもやりがいを感じております。
今年も早や陽春の候となり平成25年度県予算の審議中でありますが、私のかねてよりの持論であります、フードビジネス振興が脚光をあびております。
【1】アメリカの農業人口は全国民の1.8%程度であるが政治力はその何倍も力を持っている。
【2】25%の農家で農業生産の80%を担っている。
その耕地面積は1戸当り200~8,000ha、新規就農は資金力がネックとなって困難であるが畜産から始めるとか、農家の娘と結婚して就農するケースもある。何となく日本に似ているなと思った。
【3】アメリカの農業政策は補助から保険へと移行しつつある。
1980年代より天災ロスの回避のため農業保険が導入され始めた。
一次保険機関は民間(12社)、再保険は国で引き受け、主として収入減への保険である。
保険料は天災50%収入減までは国持ちで、50%以上~85%までのカバーでは一部農家持ちである。
農家は通常70~75%の補てん率の保険に加入しています。
当然保険料は補てん率が高い程高くなります。保険価格の設定は穀物先物市場の相場が指標です。米とピーナッツには保険はありません。
アメリカの農家は政府への信頼度が低く、農業政策は議会が決定するため、農政活動は活発です。情報提供も有料で行われています。
米国の農家支援対策は①価格支援融資、②直接固定支払い、③価格変動対応型支払が基本となっていますが、2012年農業法を巡る議論が議会で行われており、直接支払等に代わるセーフティネットとして、農業保険、補完の方向で検討が進められているとの説明を受けました。保険大国アメリカを再認識しました。
農業分野への保険適用はわが国では農業共済として、作物、家畜保険に一部国が関与して実施されていますが、農業政策の基本を成す程のものではなく、
今後の農政の重要検討事項になるのではという感触を持ちました。
知事もようやく全国トップクラスの農畜産物に価値を付加するフード ビジネスに取り組み、食品関連産業の活性化を図るとの意気込みを述べておられますが、今、原材料の供給元となる本県の農業が危機に直面しております。
和牛全国一2連覇の輝かしい表舞台とは裏腹に、農業の現場ではデフレ経済による生産原価割れ、追い打ちをかけるようにTPP交渉参加の動き、正に本県がフードビジネスに活路を見出そうとする矢先の壁になるが故、誠に許し難い思いで一杯であります。

ワシントン日本大使館での農業実態調査
主要穀物世界生産量の4割を占めるアメリカの農業を抜きに日本の農政は考えられません。
今回TPP問題もあり、現地の最前線で調査活動をされている在米大使館の農水省職員の方や、JA全中の駐在員に生の情報をお聞きしようとワシントンの日本大使館を訪ねました。
大使館が用意した「米国の農業概況と日米間の農業課題」というレジメに添って説明を受けました。項目は多岐に亘っていましたが世界の穀物取引の指標となるシカゴ商品取引所、あるいは米国農務省のデータを駆使し、アメリカ農業の説明をいただきました。
最近の世界の食料需給の動向に始まり、国際価格、穀物市場を取り巻く各種経済動向、主要国の作柄概況、中国の旺盛な穀物等の輸入需要、バイオ燃料生産の拡大とその政策、遺伝子組み換え作物の世界的な広がり等、広範囲にわたるレクチャーは世界政治の中心地ワシントンでしか聞くことのできない内容でした。さらに、農林中金・全農貿易のニューヨーク支店では世界金融の動向、農畜産物貿易の現況等の説明を受け質疑を行いました。

シカゴ郊外の穀物農家・エイベス農場の巨大コンバイン
サリナスの野菜、イチゴ、イリノイ州の小麦、大豆、とうもろこしにしても既に世界中へ販売ルートを開拓しており、なかでも日本では大きなマーケットシェアを占め、農産物の自由化はアメリカ農業からすればとっくの昔に完了しているのでしょう。
ワシントン大使館の農水省関係者、JA全中の駐在員の話からすると、総じてアメリカではTPP問題は政府の農務省や食料、農業関連団体の一部の関係者のみで論議されているのかと推察しました。
結論としてアメリカの多数の団体、企業は日本のTPP交渉参加を支持するとのパブリック・コメントが寄せられていることを聞き、改めてTPPはアメリカ主導の完全自由化に向けての貿易交渉であることを強く感じさせられました。
アメリカ社会は深刻な失業問題や一部大企業への富の集中など、アメリカ経済自体が閉塞感を強めている状況下でも、農業については順調な穀物輸出、相場の上昇を背景とした数少ない成長産業であり、安定した収入が見込める職業になっているとの説明を受け、日米の農業事情の違いと格差に空しささえ覚えました。
昨年末に希望の持てる新しい政権が誕生し、久し振りに国政への期待感が高まっております。私ども県政の一翼を担う者としてもやりがいを感じております。
今年も早や陽春の候となり平成25年度県予算の審議中でありますが、私のかねてよりの持論であります、フードビジネス振興が脚光をあびております。
【1】アメリカの農業人口は全国民の1.8%程度であるが政治力はその何倍も力を持っている。
【2】25%の農家で農業生産の80%を担っている。
その耕地面積は1戸当り200~8,000ha、新規就農は資金力がネックとなって困難であるが畜産から始めるとか、農家の娘と結婚して就農するケースもある。何となく日本に似ているなと思った。
【3】アメリカの農業政策は補助から保険へと移行しつつある。
1980年代より天災ロスの回避のため農業保険が導入され始めた。
一次保険機関は民間(12社)、再保険は国で引き受け、主として収入減への保険である。
保険料は天災50%収入減までは国持ちで、50%以上~85%までのカバーでは一部農家持ちである。
農家は通常70~75%の補てん率の保険に加入しています。
当然保険料は補てん率が高い程高くなります。保険価格の設定は穀物先物市場の相場が指標です。米とピーナッツには保険はありません。
アメリカの農家は政府への信頼度が低く、農業政策は議会が決定するため、農政活動は活発です。情報提供も有料で行われています。
米国の農家支援対策は①価格支援融資、②直接固定支払い、③価格変動対応型支払が基本となっていますが、2012年農業法を巡る議論が議会で行われており、直接支払等に代わるセーフティネットとして、農業保険、補完の方向で検討が進められているとの説明を受けました。保険大国アメリカを再認識しました。
農業分野への保険適用はわが国では農業共済として、作物、家畜保険に一部国が関与して実施されていますが、農業政策の基本を成す程のものではなく、
今後の農政の重要検討事項になるのではという感触を持ちました。
平成25年3月15日