~ 宮崎県庁は鳶か ~
日本国中何処にでもいる鳶は鷹の仲間だが鷹のように自らが狩りをして獲物を獲る鳥ではない。小動物の腐肉を横合いから奪う性質がある鳥らしい。鳶に油揚をさらわれるとはよく言ったものだ。
ところで宮崎県は、本日社会人を対象に5名以内で一般行政職員の採用試験を実施すると発表した。採用の目的理由は、県政発展のために民間企業で培った識見を活かしてもらうためとのこと。誠に耳障りよく聞こえるが、私はあまり納得がいかない。その理由を次に述べてみたい。
今回採用する職員の年齢は、行政職員数の少ないという29歳から34歳までであるが、しかしこの年齢層が際立って少ないわけではない。今回の採用期間の平均人数は22.6人で、その前の6年間の平均人数31.6人よりは確かに少ないが、これには理由がある。県が現在も実施中の行財政改革で、総職員数の削減に取り組む中で適正な定員管理に努めてきたからであり、いわんや毎年の職員採用計画も長期展望の中で適正な定員管理のもとで実施されてきた結果である。県は、すでに行財政計画は達成されたとでも言うのだろうか。その必要もないことだが、5名程度の追加採用で職員数の平準化が達成されるとでも思っているのか。硬直化した県の財政状況を考慮すれば、もっと総職員数の削減に努めて、少数精鋭化を目指すべきである。
県は民間企業が約10年間も掛けて多額の投資をして育てた貴重な人材をいとも簡単に引き抜こうというのだろうか。民間企業にとって、これから実力を発揮する企業戦士を引き抜かれては企業活動上大打撃で、その損失たるやそれまでの人件費や教育費等は莫大な金額になる。厳しい経営環境の中で、人材育成をしている民間企業の悲鳴が私にも聞こえてくる。
まだ理由を挙げれば枚挙にいとまがないが紙面の都合で割愛する。今回の採用試験は正に「トンビに油揚」ではないか。官が民を懲らしめてどうする。官である宮崎県のすることではない。宮崎県庁はいつから鳶になったのか。今回の採用試験は、聞きようでは美談にも聞こえるが、これは正に行政権力の横暴であると断ぜざるを得ない。河野県政の本質を垣間見た感がする。どうしても民間企業の識見者を採用したければ熟練した失業中の40代、50代に限定すべきではないか。
次に、憶測だが、今回の試験に申し込んだところのほとんどの民間企業は「県庁を受験したければ我が社を辞めてからにしてくれ」となるだろう。一度背を向けた社員への民間企業の対応は決して甘くない。厳しい、の一言に尽きる。これが民間企業の常識というものだ。そうなれば、採用されなかった受験者の多くが路頭に迷うことが予測できるが、このことへの責任を県はいかようにとってくれるのであろうか。また民間企業に発生した多額の損失は誰が補填してくれるのであろうか。県の罪は誠に大きいが、関係する幹部の皆さんはこの様なことを想定しているのか、と言いたいのは一人私だけであろうか。
第11回